EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「……氷河さまの…いない時に…転んだんです」
苦しい言い訳をしたら、月那の耳元で深い溜息が聞こえた。
「お前は…強情だな。そんなに真実を俺に知られたくないのか?」
その問い掛けに答えられずにいると、急に氷河の腕が月那を抱き上げた。
「きゃ!?氷河さま!?」
「もういい。わかった。早苗か駿に聞くとしよう」
お姫様抱っこをして月那を運び、湯船に入れる。
「お前はちゃんと風呂に浸かれ」
「氷河さまは…?」
「俺はもう出る。だからゆっくり身体を癒せ。いいな」
素直にコクリと頷く月那を見て、氷河は小さく笑った。
「いい子だ」
慈愛に満ちた瞳。
月那がポッと頬を赤らめた瞬間――。
――ガラリッ
「アッニキ~!一緒に風呂入ろってうおわあああっ!!!!つつつ月那ぁ!?マジかよ!アニキと月那!まさか風呂場で合体!?」
「馬鹿アホ落ち着け千夜。それ以上しゃべるな。黙れクズ」
「ぐすん。クズはヒデーよ」
「馬鹿でアホなのは認めるのか。困った奴だ」
いきなり入ってきた弟、千夜に冷たい眼差しを向ける。
月那はというと、浴槽の中で呆気に取られていた。
「千夜、俺は出るから。月那のこと、頼むぞ」
「へ?あ、うん。OK。……てことで月那。背中流してあげよっか?」
「いいです!自分でできるから千夜さまは出てってー!!」
月那が全力で拒否している間に氷河は風呂場から脱衣所へ。
身支度をしてから向かうは使用人のいる部屋だ。