EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ




「さて、月那のことを洗いざらい話してもらおうか」

早苗と駿を捕まえた氷河は風呂上がりのせいで濡れている髪をかき上げながら命じた。

しかし。

「話せません」

駿だ。

「月那は氷河さまに知られたくないんです。話すことはできません」

「もう知った。俺が見て見ぬふりをできると思うか?」

ギロリと睨まれ、駿と早苗は怯んだようにゴクリと生唾を呑み込んだ。

氷河には言わないと約束したが、仕方ない。

意を決した駿はおもむろに喋り出した。

二週間くらい前から一佳と月那の仲が悪くなったこと。

一佳が月那に何かを強制したり、暴力をふるうようになっていたこと。

駿が知る全てを聞いた氷河は無表情で加害者の名を呼んだ。


「一佳」


盗み聞きしていたのだろうか。

呼ばれてすぐ、震えながら一佳が居間へ入って来た。

「氷河さま…」

「一佳。俺が今どんな気分か…わかるか?」

声に抑揚はなかった。

そのことから彼の怒りが感じられる。


「ご…ごめん、なさい…氷河さま」

自分達に甘い氷河なら、謝れば許してくれるだろう。

今までの経験からそれを知っていた一佳は、今回も他の悪戯と同じように謝罪すれば全て解決すると信じていた。

けれど――。


「お前を、絞め殺したい気分だ」


氷河の手が一佳の首を掴む。


「ガッ…アッ!」


氷河は一佳の首を片手で絞めながら高く持ち上げた。

「なぜ月那を虐めた。答えろ」

「ッ…!!」

「氷河さま!おやめ下さい!!お願いします!!」

首を絞められて何も答えられない一佳を解放するよう、早苗が氷河の足元で土下座する。


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