EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
月那は黒髪に黒い瞳を持つ日本人の子供――れっきとした人間だ。
けれども生まれた時から地下世界にいるため、一度も地上の大地を踏んだことはなかった。
「せんやさま、ウミってしってる?」
「は?ウミ?あの傷の?ドロドロしたやつ?」
「ちがうの。ウミはあおくて、おっきいんだって」
千夜の部屋にて、月那は見ていた雑誌を千夜に差し出した。
「青くておっきい?ああ、海か!」
雑誌の見開きページには一面に青い海。
「せんやさまはウミ、みたことある?」
「本物はねぇな。こうやって人間の雑誌に載ってるの見るくらい。てか月那、この雑誌どうしたんだ?」
ふと疑問に思い尋ねれば、月那はポッと頬を赤らめてモジモジし始めた。
「あのね…ひょうがさまのおへやにあったの。ひょうがさまがみてたから…もってきちゃった」
「はあ!?まさか無断借用!?アニキにバレたらヤバ――」
その時だった。
――コンコン
部屋のドアがノックされた。
「千夜、いるか?入るぞ」
「ぎゃああっアニキ来んなぁああ!!!!」
「騒々しい奴だな。入るぞ」