EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「え?父上、今なんておっしゃいましたか?」
食事の時間。
女性から血を吸い終わった氷河は口を拭きながら失礼を承知で父親に聞き返した。
「だから、駿と月那を婚約させようと言ったんだ。一度で聞き取りなさい」
「婚、約…?」
「駿と月那!?マジで!?」
氷河の隣で子供を吸血していた千夜が驚く。
「駿はもうすぐ二十歳になる。月那もいい年頃だ。それに似合いの二人だと思わないか?」
「全く思いません!!父上の目は節穴ですか!全力で否定します!!」
「ほう…ならば氷河。駿と月那に似合いの伴侶は誰だ?言ってみろ」
「駿には桃がいいでしょう。月那にはもちろん俺です」
「ぶっ!!」
隣で千夜が吹き出した。
「「汚いぞ千夜」」
兄と父に同時ツッコミを受ける。
とその時、食事部屋の障子が開いた。
「愚息ども、旦那様、食事は終わったかい?」
ボーイッシュな短い髪にキリッとした吊り目。
美人でカッコイイ容姿の女性が入室してきた。
彼女の左目の下には息子達と同じ泣きぼくろがある。
「終わりましたよ、母上」
「そうか。にしては手が汚いね。ちゃんと洗ってきなよ?」
「それはそうと母上。聞きましたか?父上が月那と駿を結婚させようとしていると…!」
「アニキ、結婚は早ぇーよ。婚約だってばよ」
弟の訂正を無視して氷河は続ける。