EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
月那がふと目を開けたら、隣に氷河が寝ていた。
「ぴやぁあっ!氷河さっゲホゲホ…!」
「大丈夫か月那。落ち着け」
いつの間に布団の中へもぐり込んだのか、腕枕をされている状態だ。
まだ風邪っぴきの月那は咳を手で押さえながらチラッと氷河を見た。
「ケホ…なんで、いるんですか…?移っちゃいます」
「お前に大事な話があってな」
「今じゃなきゃダメなんですか?」
「ああ。今じゃなきゃダメだ」
氷河は腕枕の体勢から身体を起こし、月那を組み敷くように覆いかぶさった。
「氷河さま…?」
自分の上にいる彼をキョトンと見上げる。
真剣な赤い瞳と視線が交わった。
「月那、一度しか言わないからよく聞け」
「は、はい」
なんの話だろうと小首を傾げると…。
「俺の子を産んでくれ」
「………ふえ?」
「二度は言わないぞ」
「………ふええええっ!!!!!!?」
意味を理解して月那が真っ赤になった瞬間、スパーンと部屋の襖が開かれた。
「アニキぃい!!順番チッゲーよ!!すっ飛ばしすぎだろ!!もう一回やり直しぃい!」
「こら千夜!戻っといで!」
千夜の首根っこを母親がガシリと掴み襖をピシャリと閉める。
「………なんだ、今のは」
「千夜さまと美歩子(みほこ)さま…?」
どうやら母親と弟が聞き耳を立てていたらしい。
襖一枚隔てた向こうで今も耳をそばだてているかもしれないと思うと頭が痛い。
氷河は額を押さえた。
「はぁ……あの親子は…」