EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
告白だけにとどまらず、このまま大人の階段を一段上がるのか、と思いきや。
世の中そんなに甘くない。
地下世界だって同じこと。
――スパーン!!
襖が開かれた。
「くぉ~ら馬鹿息子!!プロポーズしろとは言ったけど下ネタに突っ走れとは言ってないわ!!」
「母さん!イイとこなんだから戻れよ!」
今度は千夜が母親の腕を引っ張り、ピシャリと襖を閉めた。
「………またか」
「……は、恥ずかしいです」
キュッと目をつぶって氷河の胸に顔を埋める月那。
まるで小動物な彼女の頭を、氷河は甘やかすように撫でた。
「母上に叱られるから、今日のところはこの高ぶりを抑えよう」
それに体調も万全ではないのだ。
彼女に無理などさせられない。
「だから月那。いずれ、な?」
耳元で色っぽく囁いてから起き上がる。
腕から解放した月那を見下ろせば、口をパクパクさせて放心状態だった。
「…おい、生きてるか?月那?」
「せ、せせ…千夜さま、千夜さま!せんやさまぁああっ!!!!!」
興奮しつつ布団から這い出る月那。
「呼んだ!?月那!」
すぐに襖が開かれ、抱き着き対象が現れた。
「千夜さまぁ!!氷河さまが私にキュン死攻撃を~!!!」
「グアッ!!…は、腹に……入った…!」
這い出た体勢から勢いよく千夜の腰にしがみつく。
月那の頭は彼の腹に見事な頭突きを食らわせた。
「……千夜、お前まだいたのか」
笑顔なのに目だけ笑っていない兄がゆっくりと近づいてくる。
「うげっ、アニキ…!」
「悪趣味な奴だ」
「ち、ちげーよ!月那に呼ばれて身体が勝手に…!」
「三度目だ。問答無用」
氷河がニヒルに口角を上げた。
千夜は反射的に飛び出してしまった自分を恨んだのだった。