EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
やがてガクリと崩れた駿の身体。
刀を引き抜いた時、最愛の声が氷河の耳に届いた。
「…氷河さま」
「月那…」
悲しげな目で氷河を見上げる月那。
彼女に責められているようで、彼は愛しい存在から視線をそらした。
「氷河さま……私達のことが……人間が…嫌いになりましたか…?」
「嫌いではない。憎いんだ」
「そう…ですか…」
月那は震えながら両腕を広げた。
「なら…私のことも殺して下さい。私も……人間ですから」
「お前…」
目を見開く氷河に、月那は微笑む。
「氷河さまに殺されるなら…本望です」
怖いだろうに、勇気を振り絞って小さな身体を差し出す少女。
氷河の瞳に迷いが宿った。
「月那……」
噛み締めるように名を囁き、刀の先で月那の首筋や胸元をツツツと撫でる。
グッと力を入れれば、呆気なく突き刺さるだろう。
月那は覚悟してギュッと目をつぶった。
しかし。
――ガシャンッ
氷河の手から日本刀が落ちる。
「クソッ!!!!」
刃を持たない氷河の両手が月那を抱きしめた。
「クソォ……」
泣き声に似た小さな声。
「氷河、さま…」
月那は震える彼の背中にそっと手を回した。