EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「お前を殺せるなら……どれだけ、心が楽か…」
悲痛な表情で氷河は思いを吐き出していく。
「…人間が憎い。父上と母上を殺した奴らが憎い!!人間という種族など滅びればいい!!!!」
彼の腕の中で月那がビクリと震えた。
気づいた氷河は壊れ物を扱うように頭を撫でてやる。
「俺はこれから修羅の道を行くだろう。人間の敵として地上を脅かす存在になるために。この恨みを晴らすまで、俺は奴らと戦い続ける。だから早苗も桃も駿も殺した。覚悟が揺るがないように。なのに、お前は……お前だけは…」
殺せると思った。
屋敷にいる人間を全員殺すつもりで父の形見である日本刀を持ったのだ。
それなのに――。
「……殺したくないっ」
月那の瞳に見つめられた瞬間、覚悟はぶれた。
「月那…お前が人間である限り、俺はお前を愛しながら憎み続けるだろう。お前の身体を痛めつけて、心を傷つけて、崩壊していく魂を愛でるだろう。だが、もう一つの運命を選んでくれるなら……俺はお前に心からの愛を捧げることができる」
「もう一つの運命…?」
キョトンとして聞き返せば、氷河は懇願めいた口調で囁いた。
「月那……闇人になってくれないか」