EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「私、が…?なれるんですか…?」
「ああ。俺のおじい様はもと人間だ」
「雪風さまが!?」
氷河は抱きしめる腕を緩め、月那の顔を見つめた。
「闇人には黄泉帰り(よみがえり)と呼ばれる存在がいる。おじい様のような、もと人間の闇人がそうだ」
「黄泉帰り……聞いたことあります」
昔、雪風から聞いた言葉を思い出しながら月那は氷河の説明に耳を傾ける。
「黄泉帰りの闇人は一度死んでいるため心臓が止まっている。対して、黄泉帰りと人間の間に生まれた子供やその子孫は心臓が動いている。まだ死を経験したことがないからな」
「では、氷河さまは黄泉帰りではないんですね」
「ああ。魔冬の家系で、もと人間なのはおじい様お一人だ」
地上で生きて死んだ人間の雪風は死後、闇人――吸血鬼となった。
生まれた時から闇人である氷河とは異なる存在だ。
「月那、お前が闇人になるためには一度死ななくてはならない。できるか」
氷河は月那にも雪風と同じ運命を背負わそうとしている。
月那は一瞬、瞳に恐怖を宿したが、おもむろに頷いた。
「氷河さまが…殺して下さるなら…」
人間である月那の最後の我が儘。
しかし、それを氷河はアッサリと突っぱねた。
「すまないが、それはできない。自分で命を絶ってくれ」
「え……?」