EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「死した人間が皆、黄泉帰りになるわけではない。おじい様の場合は自殺だったらしいから、それを真似た方が確実だろう」
月那を闇人にするのは賭けのようなものだ。
百パーセント成功する保証など、どこにもない。
それでも月那を欲しいと望む氷河は、キッチンから廊下へ出た。
「待っていろ。今、毒薬を持ってきてやる。確か、父上の部屋にあったはずだ」
「ま、待って下さい!氷河さま!」
「なんだ。どうした」
慌てた様子の月那を振り返る。
彼女の顔は蒼白だった。
「じ、自殺なんて…そんな怖いことできません…!」
氷河の服の裾を握り締め、月那は泣きながら訴えた。
「お願いです!いっそ殺して下さい!氷河さまの手で…!みんなみたいに……殺して……!」
それなら怖くない。
彼の手で逝けるなら、たとえ二度と目が覚めなかったとしても本望だ。
けれど、彼は冷たく言い放つ。
「ダメだ」
指先で愛しい者の涙を拭ってやりながら。
「愛してるから、自殺しろ」