EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ

「死した人間が皆、黄泉帰りになるわけではない。おじい様の場合は自殺だったらしいから、それを真似た方が確実だろう」

月那を闇人にするのは賭けのようなものだ。

百パーセント成功する保証など、どこにもない。

それでも月那を欲しいと望む氷河は、キッチンから廊下へ出た。

「待っていろ。今、毒薬を持ってきてやる。確か、父上の部屋にあったはずだ」

「ま、待って下さい!氷河さま!」

「なんだ。どうした」

慌てた様子の月那を振り返る。

彼女の顔は蒼白だった。

「じ、自殺なんて…そんな怖いことできません…!」

氷河の服の裾を握り締め、月那は泣きながら訴えた。

「お願いです!いっそ殺して下さい!氷河さまの手で…!みんなみたいに……殺して……!」

それなら怖くない。

彼の手で逝けるなら、たとえ二度と目が覚めなかったとしても本望だ。


けれど、彼は冷たく言い放つ。


「ダメだ」


指先で愛しい者の涙を拭ってやりながら。


「愛してるから、自殺しろ」








< 47 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop