EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
月那から離れ、父親の部屋を訪れた。
氷河は机の引き出しに入っている小ビンを手に取り、中の液体を見つめる。
「毒薬、か…」
生前、父親は言っていた。
――私がこれを飲む時は、美歩子が死んだ時だ。共に生き、共に死ぬと誓ったからな
長い時を生きる闇人。
愛する伴侶と共に生を終わらせる闇人は少なくない。
だが、氷河は共に朽ちることではなく、共に生きていくことを望んだ。
「父上…俺は、間違ってはいませんよね…?」
最愛の人間を闇に引きずりこもうとしている。
ふと脳裏を過ぎるのは、先程の月那の泣き顔。
――お願いです!いっそ殺して下さい!氷河さまの手で…!みんなみたいに……殺して……!
どれだけ泣かれても、己の欲望を優先してしまう自分を氷河は悲しげに嘲笑った。
「氷河」
「おじい様…」
音もなく部屋に入ってきた祖父、雪風。
「何をしているのかと思えば……それは毒か」
「おじい様……出掛けていたのでは…?」
「ああ。永久が殺され、人間との間に戦争が起こりそうだったからな。幹部の奴らに説教してきた」
「……おじい様は、なぜそんなに冷静でいられるのですか。父上が殺されたんですよ?」
怒りを孕んだ孫の声に、雪風は力無く微笑した。
「そうだな……。これで良かったのかもしれないと…思っているからな」