EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ

「は…?父上が死んで、良かったと!?」

「氷河、私は共存主義でも支配主義でもない。断絶主義者だ」

これ以上、闇人は増えなくていい。

断絶主義者はそう考える。

「苦しむのは我々、黄泉帰りだけでいい。お前にも早く、死という甘美な安息を与えてやりたいよ」


遠い昔、まだ地下に闇人の街を作る前。

闇人――吸血鬼は生きている人間に嫌われながらも地上で暮らしていた。

太陽がある時間帯は土の中の棺桶に横たわり、夜になってから地上をさ迷う。

彼らと人間との間に生まれた子供達は吸血鬼と一緒にされ、殺されたり迫害されたりと悲惨な人生を強いられる者が多かった。

雪風も過去に息子を二人、人間に殺されている。

永久もいれて三人になってしまった。

「子孫に行き場のない辛い思いをさせるくらいなら、これ以上新しい同族などいらない。地下の街で暮らすようになってからも、この思いは変わっていないぞ」


闇人の退廃を望む。

それが祖父の考え。

「おじい様」

理解はできるが、納得はできない。

氷河は瞳に炎を宿した。

「俺は黄泉帰りの上から目線が嫌いです。自分の人生くらい自分で背負います。俺は二人分…月那の人生も背負って生きていくと決めたんです。邪魔はさせません」

小ビンを握り締め、氷河は部屋から出ていった。


「ふっ…若造が」


寂しげに笑う雪風は、諦めたように瞼を閉じた。







< 49 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop