EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
毒薬を持ってキッチンに戻ったら、涙で頬を濡らす月那が千夜に抱きしめられていた。
「千夜…」
「アニキ!!なんだよこれ!!こんなことして!月那まで殺す気かよ!!」
キッチンに転がっている三人の血まみれ死体を指差し、怒鳴る。
「やかましい。月那を渡せ」
「嫌だ!!今回だけはアニキに従えねぇ!!」
「千夜……困った奴だ」
溜息をついてから氷河は月那に視線をやった。
「月那、自殺する覚悟はできたか?」
怯えた眼差しで氷河を見上げる月那は、全く心が決まっていないようだ。
「できないようならば、こうしようか」
落ちていた日本刀を持ち、その切っ先を千夜に向ける。
氷河は躊躇いなく弟の太ももに刀を突き立てた。
「グアッ…!!」
「千夜さまっ!?」
さらに氷河は突き立てた刀をグリグリと捩込んだ。
月那を守るように抱きしめたまま、千夜が悲鳴を上げる。
「やめて!!やめて氷河さまぁあ!!」
「お前が自ら毒を飲まないというなら、その気になるまで千夜を拷問してやろう。大事な相手が傷つき死にいくさまを、お前はどこまで正気を保ったまま眺めていられるかな?」
狂ったようにぎらつく赤い瞳が月那に笑いかける。
「言っておく。もし千夜が死んだら次は……俺自身を切り刻む。死ぬまでな」
彼は月那の性格を知っている。
大切な人が傷だらけになっていく姿を平然と見ていられるほど冷淡ではないことを知っているのだ。