EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ

月那は真っ暗な瞳を氷河に向け、手を伸ばした。


「……くだ、さい…」

「ん?何をだ」

「毒…のむから……私が…のむから…」


聞いた瞬間、とびきりの笑顔を見せた氷河。

「月那、愛してる」

愛を囁きながら小ビンを渡す。

月那は千夜を優しく床に座らせると、氷河に近寄り毒薬を受け取った。

ボロボロ泣きながら蓋を開け、そっと口元へ持っていく。


「ひょう、が…さまぁ…」


「どうした」


「こ、わい…よぉ…」


「なら抱いててやる。俺の腕の中で逝け」


背中から抱きしめられ、月那はさらに涙をこぼした。

もう、逃げられない。

自分の運命は小ビンの中。


「やめ、ろ…」

傷の痛みに耐えながら、千夜が月那を睨んだ。

「やめろ、飲むな…!」

しかし千夜の言葉も虚しく、口元で月那は小ビンを傾ける。


「やめっ…やめろぉおおおっ!!!!!!」


ゴクン、ゴクン――。

月那は一気に中身を飲み干した。


「ひょ、が…さっ………こわ、い……」

「大丈夫。すぐに効いてくる。……大丈夫だからな」

氷河は片手で月那の両目を優しく覆ってやった。

暗闇が月那を支配する。

耳元には氷河の吐息。


「…ひょ……が……ま」


息が苦しくなってきたのか、月那の言葉が聞き取りづらくなっていく。


そして、彼女はとうとう血を吐いた。




「愛してる、月那。今度目覚めたら…その時はずっと一緒だ」



氷河の誓いの口づけが、月那の首筋に落とされた。









【憎愛編 END】


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