EGOISTIC憎愛デジャ・ビュ
「邪魔するぞ」
滅多に来ない珍客が訪れた。
「ひょ、氷河様!?」
驚いて素っ頓狂な声を上げる駿。
早苗は目を丸くし、三人娘は喜んだ。
「わーい!ひょうがさまだぁ!」
食事の途中で一佳が立ち上がる。
一佳は笑顔で氷河に抱き着いた。
「おっと…!ふっ、一佳は今日も元気だな」
「はい!」
一佳を抱き留める氷河。
そんなご主人様に今度は桃が駆け寄った。
「ひょーがさま。わたしも、だっこ…」
「食事の途中ではないのか?仕方ない奴だな」
呆れつつも微笑しながら桃を抱き上げる。
(ひょうがさま…)
見ているだけの月那はモヤモヤした気持ちでトーストをかじった。
と、ふいに氷河と目が合う。
「月那」
赤い瞳で優しく見つめられ名を呼ばれたが、月那は泣きそうなのをこらえてプイッとそっぽを向いてしまった。
(あう……また、やっちゃった…)
どうしてか素直になれない。
本当なら一佳や桃みたく甘えたいのに、正反対の態度をとってしまう自分に落ち込む。
後悔しながらションボリしていると、近くで溜息が聞こえた。
氷河だ。
彼はいつの間にか抱っこしていた二人を解放し、月那の椅子の後ろに回っていた。
「月那。忙しいこの俺が、わざわざ寝て起きて早々ここへ来たのは誰のためだと思ってるんだ?」