吸血鬼くんの話、
「満月。…ちょっと聞きたいことがある」
カーテンごしの満月の影。
ゆらゆらと揺らめく。
「なんだ?明。私の知っていることか?」
二人にしか聞こえない声。
二人以外には聞かれたくない話。
「お前、シャルドネにはどんな人間を連れていったんだ?」
魔女には、満月が人間を連れていっていると聞いた。
だから満月が若い男を連れ去っているのなら誘拐犯である可能性が上がる。
「どんなと言われても…シャルドネ様は若い女が好きだから、女の子をつれていくことが多かったな。血を貰ったあとはちゃんと家まで送ったぞ?」
満月から返ってきた答えは意外にも誘拐犯ではないという証言だった。
なら、俺を連れたのは例外だったってことか?
「今さ、失踪事件が相次いで発生しているらしい。お前は噛んでいるのか?」
失踪と、少し言葉が違うかもしれないがやんわりと伝える。
満月は着替え終わったらしく黒猫の着ぐるみパジャマを着て出てきた。
ひかりはまだ戻ってこない。
「私は関係ない。関わった子は家に帰るのを確認している。失踪した子はいなかったはずだ」
試着室からでて、その場を離れる。
ひかりを見つけたのでゆっくりと歩いていく。
「なら、いい。なんか分かったら教えてくれ」
満月は俺の後ろを着いてきながら
「心得た。知り合いに聞いてみる」
と言った。
満月に知り合いがいるとは驚きだった。
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