吸血鬼くんの話、
あのときの子供は施設が無理矢理引き取ったが、成長した今でもどちらとも似ていない。
誰の子だったんだろう。
「ひかりは、なんで、あなたに愛されてるのかなぁ…」
呟くように、ルーニャが話す。
ルーニャが勘づくぐらい、分かりやすかったのか…。
「どうでもいいだろ…そんなこと…」
あまりその話はしてほしくない。
ひかりが好きな理由なんて、簡単には言えない。
「……ひかりを、返してあげる。ただし、これを解決してくれるのが条件」
ルーニャはそう言って紙束を渡した。
ルーニャが押し付けてくる仕事は大抵めんどくさい。
今回の仕事は、部長が気になっていた失踪事件の解決だった。
犯人を、ここに連れてくるまで俺がやらなくてはならない。
「……分かった。やってやるから、ひかりを返せ」
元々気になっていた事件だ。
ルーニャが言わなくても調べるつもりだったからちょうどいい。
ルーニャはむすっとしながら奥の部屋に行き、ひかりをつれてきた。
ひかりは、酔っぱらったかのようにふらふらとおぼつかない足取りで出てきた。
「あ…!明!おっはよー!」
様子がおかしいのは薬のせいなのか、元々なのかわからないが夕暮れ時におはようと言う人間は初めて見た。
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