吸血鬼くんの話、
「ん?喋る猫は初めて見たか?小僧」
黒猫は嘲笑うかのように、話を続ける。
驚いてる自分を。
「初めて見た。俺は、江口 明。君は、誰?」
俺が聞くと、黒猫は含み笑いをし、
「私は満月。目が月のようだと言われ、そう名付けられた。小僧、なぜ私が見える?」
不思議なことを聞かれた。
なぜと聞かれても、幽霊のように透けてる訳じゃないから普通にみえた。
「満月は…何者なんだ?」
黒猫は、声にそぐわない口調で答える。
「私は魔女の仕え魔だ。そしてここは、魔女の家。君は、閉じ込められた」
魔女。
あまりにも普通に会話に出てきたのでスルーしそうになった。
それに、閉じ込められた?
「どういう意味だ?庭の入り口だって鍵すら付いてないただの門だったじゃねーか。どうやって……」
俺がそう言いながら門を開ける。
扉だけ開いたが、自分の体は門をくぐれなかった。
まるで、透明な壁があるかのような…。
「だから言っただろう。もう、ここからは出られないと」
そう言いながら俺の足元に来た黒猫の満月は、出て欲しくなさそうにこちらを見上げた。

閉じ込めることに成功したのに、ちっとも嬉しそうじゃなかった。
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