吸血鬼くんの話、
「出れないのは分かった。魔女はなんで俺を閉じ込めた?」
黒猫は、俺の疑問に答える。
「魔女は若い人間の血を欲している。君のような、私を見ることのできる人間を」
黒猫は家に向かいながら話す。
俺も後を追いながら
「若い“人間”の血…ね…。悪いけど、協力できないな…」
窓をカリカリと引っ掻く黒猫をどけて窓を開ける。
鍵はかかってなかった。
「できるできないじゃない。この家に来たからにはな。あ、靴は脱いで、手に持っておけ」
中に入り、猫の足跡を残しながら歩いてゆく。
「満月、ちょっと待っとけ」
鞄からタオルを取りだし、黒猫の足を拭き床も拭く。
「なんだ、小僧。別に拭かなくても気にする意味はないぞ」
黒猫の発言はわかる。
家の中は、ボロボロに崩れている。
板が抜けそうでハラハラする。
「気になんだろ。つーか、靴脱ぎたくないんだけど」
埃があるわけではないが、危ない。
黒猫は首を振って
「止めておけ。靴の音は気づかれる」
と言いながら階段を上っていった。
後を追ってばかりだなと思いながら階段を上る。
2階には部屋がひとつしかなかった。
むしろ2階はすべて一部屋になっていてすごく広かった。
家具は、ベッドが一つのみ。
「満月、どうしたの?」
若い、女の子の声だった。
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