吸血鬼くんの話、
血を舐めようとしたシャルドネの動きが止まる。
「…私が飲めば、死ぬところだわ。魔女は、人間以外の血を飲むと死ぬから。ごめんなさい、明。満月、明の血を舐めなさい」
ベッドにまた横たわるシャルドネ。
満月は、白い布をくわえて、持ってきてくれた。
「小僧。これで止血しな」
俺に渡し、床を舐める満月。
布を手に巻き付けながら
「………満月。お前、人間なのか?」
血を舐めて、体が大きくなり、本当の少年のようになった。
「元、な。まさか戻るとは思っていなかったが…」
黒髪と黄色い瞳の少年。
服は、着ていない。
「満月って何歳だ?口調が古いからもっと年取ってると思ってた」
ブレザーを脱いで、満月の肩にかける。
「私はまだ15年しか生きていない。猫として生きてたから老けてしまったんだろうな」
満月は懐かしむように呟き、立ち上がった。
「シャルドネ様。なぜ、私の姿を元に戻してくださったのですか?猫の方が、人を連れ去りやすいのに」
シャルドネは体を起こすことはせず
「もう…お前に飽きたのよ。新しい子がほしいわ。お前はもう要らないから、親元にでも帰るといいわ」
布団にくるまるようにして話す。
満月は形容しがたい顔をしながら、階段を降りていった。
「で?実際は?」
遠ざかる足音を聞きながら真意を聞く。
シャルドネは
「私はもう、長くない。だから、いつまでもあの子を使うわけにはいかないわ。だから、あなたが来てくれてよかった。これで、肩の荷が下りたって感じかしら。また一人で、誰かを誘い込むわ」
そう言って、音をたてずに静かに泣いた。
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