happy new me !


「お兄さん、何歳?」

「僕はねぇ、30歳。」

「えぇ!若いですね!」

「そんなに老けて見えたの?ショックだわー。」

「そうじゃなくて。1人でお店やってるってことは、オーナーさんですよね?」

だからもっと年上かと。
3つしか変わらないのに、こうも人生違うものか。

「そう!生意気でしょ?」

「そんな……かっこいいです。」

素直に出た私のその言葉に満面の笑みで、ありがとう!と言った。

「これ、名刺!」

腰バックから名刺を取り出して私に差し出した。



《hair salon Magie Ciseaux 小野 慎》


小野……シンさん?

「シンさんですか?」

「ううん。マコトね!」

「慎さん。サロン名は何て意味なんですか?」

「それは、フランス語で魔法とハサミって言う単語を並べたんだよ〜!」

そう自慢気に言う。
魔法とハサミ。とっても素敵。
実際に私は今、そのハサミで魔法にかかっている真っ最中なんだ。


「君の名前は?」

「伊崎 奈菜です。27歳です。」

そうなの!若いじゃん!
と驚いたように言っている。
私こそ、老けて見えたんだろうな。


「で、奈菜ちゃんは今日、何であんなに辛気臭い顔してたわけ?」

おぉ。いきなり切り込んでくるな。

しかし私はなぜか、この人になら喋ってもいいかも。と思ってしまった。
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