孤独女と王子様
☆プロローグ~side YUI~
夜。
ついこの間まで熱帯夜だと思っていたのに、いつの間にか夜風が涼しくなってきた今は9月の終わり。
昼は龍成社の桐生(キリュウ)さんと来週行われるイベントの打ち合わせがあり、今は働いているわかば堂書店本店4階のビジネス書コーナー付近を回っていた。
平積みされている本を整えたり、棚置きをしている書籍を入れ替えたり。
そこに、何か悩んでいる様子の男性がいた。
私は声を掛けた。
「何か、本をお探しですか?」
私の声に、振り返ることなく本棚を見つめ続ける男性。
『あの、壁にぶち当たっているんです』
「はい?」
『CSの壁です。って言っても分からないですよね、失礼しました』
そう私と会話をしながらも、本を探すのを止める様子はない男性。
「CSとは、カスタマー・サティスファクション。顧客満足度、ですね」
『よくご存知ですね』
「お客様向けの仕事をしている人間なら常識です。失礼ですが、お客様も、そういったご職業ですか?」
男性は本を探すのをやめ、私の方に向きを変えた。
ついこの間まで熱帯夜だと思っていたのに、いつの間にか夜風が涼しくなってきた今は9月の終わり。
昼は龍成社の桐生(キリュウ)さんと来週行われるイベントの打ち合わせがあり、今は働いているわかば堂書店本店4階のビジネス書コーナー付近を回っていた。
平積みされている本を整えたり、棚置きをしている書籍を入れ替えたり。
そこに、何か悩んでいる様子の男性がいた。
私は声を掛けた。
「何か、本をお探しですか?」
私の声に、振り返ることなく本棚を見つめ続ける男性。
『あの、壁にぶち当たっているんです』
「はい?」
『CSの壁です。って言っても分からないですよね、失礼しました』
そう私と会話をしながらも、本を探すのを止める様子はない男性。
「CSとは、カスタマー・サティスファクション。顧客満足度、ですね」
『よくご存知ですね』
「お客様向けの仕事をしている人間なら常識です。失礼ですが、お客様も、そういったご職業ですか?」
男性は本を探すのをやめ、私の方に向きを変えた。
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