孤独女と王子様
『冗談では言っていません。貴方にこういうお誘いがしたくて、わざと閉店間際を狙ったのですから』

これって、どういうことだろう。
イケメンさんの素性を知らないのに、この誘いに乗ることは正しいのだろうか。

だから、少し意地悪な質問をした。

「新手のナンパですか?」

私の言葉に、イケメンさんはちょっと慌てた素振りを見せた。

『いえいえ、純粋なお誘いです』
「でしたら、名刺の1枚渡して頂いてもよろしいかと思うのですが」

素性を知るには、一番手っ取り早い手段だ。

『…』

私の提案に、イケメンさんは躊躇している様子だった。
素性の分からない男性に、ホイホイついて行ってしまうほど、私は子供じゃない。

「CSの本をお求めなくらいですから、それ相当のホテルにお勤めなのではとお見受けします。そのような方なら、必ず名刺はお持ちかと思いますが」
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