孤独女と王子様
決して彼を責めているわけではない。
仮にも大事なお客様だ。

そして過剰に警戒しているわけでもない。
社会人として、当然の対応だと思う。

『あなたのおっしゃる通りだと思います。僕個人の事情としてあまり気乗りしないのですが、最初が肝心ですよね』

と、イケメンさんは訳の分からないことを言うと、両手で名刺を差し出した。

両手でそれを受けとると、名刺を見た。

【株式会社 ゴールドホテルグループ ゴールドヘブンリーホテル東京 宴会部 婚礼課 成瀬川剛】

ゴールドヘブンリーホテルかぁ。
最高級グレードのホテルじゃない。

そして、名前…成瀬川剛?

成瀬川って、あの旧財閥の成瀬川グループ…
ゴールドホテルグループも、出版社の龍成社と同じく確か成瀬川グループの中核企業のはず。

「あの、貴方は…」
『だから、名刺を出したくなかったんです。僕の存在が、なかったことにされそうで。成瀬川の名前は、こういう時は凄く鬱陶しく思います』
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