孤独女と王子様
だって私達は"恋人同士"じゃなくて"親友同士"でしょ?と。

剛さんはまるで、あの時の告白を私に絶対忘れるなよ、と言わんばかりの言動。

私も剛さんを目の前にして気持ちに嘘をつけないので、困る。

"私だって剛さんと同じ気持ちだよ"って、喉まで出かかっているのに。

でも、剛さんが正直なおかげで、仕事とは関係ないことを剛さんは私に言ったはずなのに、来月からの不安がかなり払拭されたような気がするから不思議だ。

「剛さん、ありがとう」
『何が?』
「やっぱり今日、ここに剛さんを呼び出して正解だった」

今日は火曜日。
翌日になれば剛さんには会える。

でも私は今日会いたかった。
今日、辞令を貰って不安な気持ちでいる私は、どうしてもすぐに安らぎが欲しかった。

『明日、天気いいみたいだし、桜でも観に行こうか』
「うん」

剛さんは私の気持ちを汲み取り、多くは語らずにいつも通りの誘い方であることが心地いい。
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