孤独女と王子様
桜の木の真下にあるベンチに私達は腰かけた。

その途端、私の頭の上に何枚かの桜の花びらが降ってきた。

すかさず剛さんは持っているカメラで撮影した。

『この写真も、最高だね。カメラって凄いね。腕がなくても綺麗に撮影してくれる。いや、由依ちゃんが最高に綺麗で可愛いからだろうな』

そう言って再び私に向かって微笑む剛さん。

「もう、そんなストレートに言わないでよ」
『でも、気持ちは言葉にしなきゃ勿体ないよ』
「友達でいる約束でしょ?」
『だから、こんな僕に対する由依ちゃんの態度は保留でいいんだよ』

ごめん、剛さん。
私は心の中で謝った。

剛さんがもし成瀬川家みたいな旧財閥の御曹司じゃなかったら・・・私は一緒にいたのだろうか?

答えは、いる。

だって、初めて会って気になった時点では、剛さんはただのCSに悩むお客様だったわけだし。

帰りの車の中も、剛さんの運転する横顔は、間違いなくイケメンでキラキラ輝く王子様だ。
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