孤独女と王子様
その後も毎週水曜日は一緒に過ごした。

6月下旬には私の希望で尾瀬に行った。
水芭蕉が見たかったから。

前日に山小屋に相部屋で泊まるけど、やっぱり友達同士にはその先への進展はない。

夏になると、一緒にテニスをした。

高校生以来やってなかったし、剛さんの体力には遠く及ばないけど、部活の時のギスギスした感じではなく、心から楽しめるスポーツなんだと知った。

秋は登山と紅葉狩り。

冬はスノボー。

"恋人同士"ではない思い出は、積み重なっていく。

それでも剛さんは私のことを"大好き"と言い続けてくれた。

プラトニックな関係。

23歳の私。
26歳の剛さん。

世間では、完全に大人として扱われる。

私が望んだことなのに…
強引に行けば私の体を奪うことなんて簡単なのに…

そうなって欲しいと思う反面、裏切られることが怖い。
相変わらずそんな葛藤が私の中では繰り広げられていた。

そんな葛藤の蓄積が知らず知らずの間に私の心を蝕んでいたのかも知れない。

3月7日。

私は事件を起こす。
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