孤独女と王子様
"う~、思い出せなくて気持ち悪い"と言いながら、目の前のプレートに乗ったランチセットを食べ始めた母さん。

『今度、ここに連れて来なさいよ。彼女だろうが、友達だろうが、それは関係ないでしょ』
「彼女も社会人なの。"里絵子タイム"には合わせられないよ」
『私の息子のくせに生意気な』

そんな調子だから、由依ちゃんが母さんのファンであることとか、本の感想とか伝えたら面倒なんだよな。

だから言うのやめた。

『今日はちょっと時間空いたからアンタを呼んだだけだったけど、由依ちゃんの話を聞けたから、収穫収穫』

と満足そうに言う母さんと別れ、来月由依ちゃんと行こうと言っている登山に向けて新しいシューズを物色した後、スラジェに向かった。
< 133 / 439 >

この作品をシェア

pagetop