孤独女と王子様
『うちの高松と神戸さんは高校の同級生で、ちょっとした行き違いと高松の言葉足らずで、神戸さんに大きな誤解を招いてしまっているようなんだ』
「誤解?」
『その誤解によって、神戸さんは高松を恨んでしまっている』

"でもね"と、ケン兄さんは続ける。

『その恨んでいる気持ちも、神戸さんが高松のことが好きであるがゆえなんだろうなって思うんだよね』

ケン兄さんはそう言うと白ワインをひと口飲み、くるくる中身を回した。

『そして高松は高松で、神戸さんに謝りたいと思っている。でも5年離れていて、あのデモ販の時だけでは簡単には溝を埋められない』
「多分、由依ちゃんは自分の運命そのものを恨んでいるのかも知れない」
『う~ん、それが彼女の"心の闇"なんだよ。高松は、神戸さんに"偽善者"呼ばわりされて、ショックで仕事が手につかなくなっている』
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