孤独女と王子様
『それはそうだけど、剛、その"旧財閥の御曹司"って誰だか気にならないか?』
「そんなの、最早誰だっていいよ。由依ちゃんが苦労したのには変わりない」
『舟さんだよ』
「え?」

舟さん・・・旧財閥の【鍬形コンツェルン】会長の鍬形舟(クワガタシュウ)さん。
結婚し、かなり年数が経ってから啓慈(ケイジ)くんという長男が生まれたけど、奥さんは3年前に病気で亡くなっている。

旧財閥同士の横のつながりで、僕やケン兄さんもお世話になった。

その舟さんが・・・由依ちゃんの実父?

「あ!」
『何だよ』

昼に母さんに由依ちゃんの写真を見せた時、しきりに"誰かに似ている"と言っていた。

「由依ちゃん、舟さんに顔がそっくり」
『そう。もう舟さんのDNAが入っていることが見た目で分かるくらいそっくりだよな』

母さんと舟さんは互いが小さいころから知っている、幼馴染の関係だ。
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