孤独女と王子様
すると剛さんは私の頭の左右に両手をついて、さらに顔の距離が近くなった。

ただでさえ狭いアパートなのに、さらに逃げられない状況。

『逃げてないのなら、今ここで言え』

いつになく声色が低い。
私はそれに戸惑って、声が出なくなった。

『言うんだ、由依』

その勢いに、押される。

『由依が言えないのなら、このままキスするぞ』

キス?
しようと思えば出来る距離たけど…それって脅しになってないよ。

むしろして欲しいと思ってしまった私。
本気で私に話して欲しいと思っているであろう剛さんに胸の内を知られたら、いよいよ怒られそうだ。

「言うよ。言うから、とりあえず座ろうよ」
『ダメ。このまま話すんだ』

剛さんは私を"解放"する様子がない。

私は剛さんから目を反らした。

『由依、目を反らすな。僕の目を見るんだ』
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