孤独女と王子様
私がそう伝えると、剛さんは困った顔をして頭を掻いた。

『内緒なんだけどさ、金澤と僕は、中学高校の先輩後輩なんだよね』
「そうなの?でも、それだけだったら、別に内緒にする必要ないよね」
『龍成社の裏内規でさ、ナルガクの出身者は採用しないっていうのがあるらしいよ』

成瀬川学院出身者は龍成社に採用しないって・・・だって、どちらも成瀬川グループの内部じゃん。

自分のとこの学校を卒業したのに、自分のところの会社に入れさせないって、不思議なルールだ。

『変な派閥を生んだり、出版物のアイデアの偏りをなくすためらしいよ。うちのホテルはいっぱいいるけどね』

その裏内規に抵触するので、金澤さんがナルガク出身だということが内緒なら、剛さんと先輩後輩だということも内緒なわけか。

「でもさ、なら何で金澤さんは龍成社に採用されたの?」
『それだけ金澤が優秀だということなんじゃないの?あ、由依ちゃんは龍成社の社員と関わることが多いだろうから、この話、内緒ね』
「うん、もちろん」

金澤さんの立場を悪くしそうだからね。
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