孤独女と王子様
『あとさ…由依ちゃんが虚勢を張ることなく素直になれば、きっと遥香ちゃんと仲良くなれるよ。けどさ…』
「けど?」
『友達としての僕の出番が減りそうだなぁ』

剛さんはそう言って寂しそうな顔をした。

「大丈夫だよ。龍成社は土日が休みでしょ?こうやって水曜日に丸ごと時間が取れるのは、剛さんだけ」
『そうか、そうだよね』

剛さんはローテーブルに肘をついて私を見つめた。

『やっぱり、由依ちゃんは可愛いね』
「そんな、王子様顔で言わないでよ」
『どうして?僕は普通に由依ちゃんへの印象を表現しているだけだけど?』

剛さんはそう言いながらも私に視線を送ることをやめない。

「友達なら、そんなこと普通言わないじゃん」

先週の私の行動がきっかけとはいえ、今日は特に剛さんとの空気が変だ。

しかも、今日はキスまでされた。

でも、その変な空気もキスも、全く嫌だとは思っていない私がいる。

むしろ、それを望んでいたかのように私の心が喜んでいることを自覚してしまった。
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