孤独女と王子様
マスターが置いたコースターの位置…僕の左隣にかんべさんは着席した。

『あの、座ったままで申し訳ないのですが、まずはこれを受け取って頂けませんか?』

そう言ってかんべさんが渡してきたのは、名刺。

【株式会社 わかば堂書店 本店 ビジネス書担当兼イベント担当 神戸由依】

「かんべさんって"こうべ"っていう字を書くんですね」
『はい。よく間違えられます』

マスターが、"君、何を飲む?"と神戸さんに聞いてきた。

彼女は迷っている様子だった。

『この店にはメニューがないんだ。リクエストを言ってくれれば作るよ』

マスターは初対面の神戸さんに敬語は一切使わない。
CS的にはダメだと思う。
でもそんなことを考える人ではないのも分かってる。

『じゃぁ、梅酒ソーダで』
『了解。美味い梅酒があるよ』

と、すぐにグラスを準備したマスター。
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