孤独女と王子様
「こんばんは」

まずは一礼した。

『待っていたよ、剛』

久しぶりに聞いた、舟さんの声。

顔を上げると、驚いて大きな目をさらに丸くしている由依ちゃんと、カウンターの内側にはこちらの様子を伺うように見ている女性。

由依ちゃんのお母さんだろう。

この中で、僕はまず初めに挨拶すべきは、初対面になる由依ちゃんのお母さんだと思った。

「初めまして、成瀬川剛と申します」

お母さんも合わせて頭を下げた。

『由依の母の律子(リツコ)と申します』
『剛さん、仕事は?』

由依ちゃんが驚きながらも気になることから聞いてきた。

「終わらせてから来たよ」
『疲れちゃったんじゃない?』
「大丈夫。ここに行くことを決めてからは楽しみで仕方なかったから」

すると、お母さんが"フフ"と笑って由依ちゃんを見た。

『あら、由依ってそんなに人に気を使える子だったっけ?全く人に興味がなかったはずなのに』

お母さんは僕を見た。
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