孤独女と王子様
『さっき、由依本人には話したんですけど、由依の名前の意味って、自由に依(よ)る。つまりは"自由にそって"生きて欲しい。自分にとって自由な人生であって欲しいと言う願いがこめられているんです。元々由依をこんな性格にしてしまったのは私が悪いのですが…』

律子さんは僕を見た。

『先程までおられた方々が帰られた後、由依が舟さんに対して最初に話題にしたのは、あなたのことだったのです。もし、由依が名前の通りに自由な生き方をしてもらえるのなら、きっとあなたがそばにいるのが一番かと思ったのです』

そう言うと律子さんは僕に"よろしくお願いします"と頭を下げた。

『でも、剛の気持ちもあるだろ?まぁ、この時間にここに来てくれるくらいだから、気持ちの答えは見えてるか』

小さい頃からの僕をよく知る舟さん。

世の中のいわゆる"父親"的な思い出を作ってくれたのは、実父ではなくて舟さんと言っても過言ではない。

だから、きっと僕の行動を見れば、気持ちをいくら隠したって、舟さんにはお見通しなんだ。

だから、ごまかしはこの人には効かないと思った。
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