孤独女と王子様
ツインの部屋に2人で泊まることは別に初めてではない。
登山に行くにもスノボーに行くにも、私達は同室に泊まる。

理由は、寂しいから。

"例えば、女友達とこうやって出掛けて、別々の部屋に泊まるか?"と剛さんに聞かれて、私はしばらく友達はいないけど、さすがにそれには"いいえ"と答えた。

だから、友達だからこそ一緒の部屋という理屈だった。

でも、今日は、いつかのスノボー旅行の時とは、さらに雰囲気が違う。

エレベーターで12階の部屋に上がる。

剛さんが鍵を開けてくれた。

扉を開けると、私を先に部屋へと入れた。

電気が点いて、扉に内鍵を掛けると、剛さんは部屋の奥に行こうとした私の歩みを、私の手を引く形で止めた。

『ちょっと待った』
「え?」

驚いて私が振り返ると、左側の壁に私の体を肩を押して寄りかからせて、顎に自分の左手を添えて上に向かせた。

そのまま、唇を自分の唇で塞がれた。
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