孤独女と王子様
「んっ!?」

右手は壁についていて、身動きができない。
顎にあった左手は、私の腰の位置に変わった。

性急な環境の変化にただ驚くだけの私。

戸惑う私に対して剛さんはさらに注文をつける。

『由依、口を少し開けるんだ』

私はその言葉に条件反射の如く従った。

それを待っていたかのように、さらに頭を私の口に合わせて横に傾け、深いものになっていくキス。

こんなの、初めてだ。

唇が離れると、今度は反対に首を傾け、再び重なる。

どうしよう。
気持ちがいい。
このまま時間が止まれば、ずっとこの気持ちいい感触を味わえるのに。

唇が重なったまま、剛さんは私の体をさらに引き寄せた。

私は体の奥が疼くのを感じている。
剛さんの強引とも思える行動は、私を何かに目覚めさせた。

今まで無理に眠らせてきた、剛さんに対する別の感情が、堰を切って溢れ出た。
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