孤独女と王子様
「由依ちゃんはやっぱり可愛いね」

僕がこうやって抱き締めるのは、単に由依ちゃんが大好きだからという理由だけではない。

由依ちゃんは今までの人生で他人はもちろん、親にも甘えられなかった。
甘えてはいけないと自分で虚勢を張って生きてきたんだ。

せめて、これから先の人生は僕が由依ちゃんを甘やかしてあげたい。

父親の代わりと言うのはおこがましいけど、それに近いくらい溺愛するんだ。

宇梶さんのお父さんもきっと娘を溺愛してきたんだろうな。

由依ちゃんは大人だから、周りが甘やかしても芯の強さは変わらないと思うけどね。

「由依、ベッドに移ろうか」
『うん』

僕は由依ちゃんの両方の脇の下に手を入れて、由依ちゃんの体を持ち上げた。
まるで、湯船に浸かっていた子供を出すような格好。

この場合は浴槽じゃなくて、ベッド行き。

由依ちゃんは子供じゃないから、ベッドに寝かしたら、そのまま眠る…なんてことはない。

『剛さん、チューして』
「はぁい」

由依ちゃんが無邪気に喜ぶ顔なのはここまで。
その後はしっかり"女"の表情に変わる。
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