孤独女と王子様
普段僕は"由依ちゃん"と呼ぶ。
でも、あるきっかけで呼び捨てになる。

由依ちゃんによる分析では、僕の頭の中が由依ちゃんでいっぱいになると、呼び捨てになる。

それは愛し合う時だけではなく、全ての感情に共通する。
だから、怒った時も。

今は呼び捨てだから、頭の中が由依ちゃんでいっぱいである証拠だと、由依ちゃんは思ったんだろうな。

「ごめん、無理させてるかな」

由依ちゃんは首を横に振った。

『私も剛さんと同じ気持ちだから』
「体、キツくない？」
『早くもっと剛さんが欲しくてウズウズしている今の方がキツいの』

僕も僕なら、由依ちゃんも由依ちゃんだ。
これじゃ、朝までコースだ…

朝、由依ちゃんは"腰が痛い"と苦笑いしていた。

『でも、欲しがったのは私だもんね、これくらい平気平気』

そうだよ。
あれから由依ちゃんの方が"もっと"とおねだりを繰り返したんだ。

それがあまりに可愛くて毎回のように壊れるくらいに抱き倒すのは、僕なんだけどね。

「来週までには用意するよ。結婚式用の服」
『うん。待ってる』

そんな朝の会話を交わし、互いに仕事へ向かった。
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