孤独女と王子様
『別にいいだろ?龍成社は引き受けたんだから、それ以外のことは好きにしたってさ』

マリちゃんがひとりで口に食べ物を入れているのを見守りつつも、剛さんの言葉はきちんと返す健吾さん。

そもそも、龍成社を引き受けること自体があまりに大きなことだと思う。

聞けば、健吾さんの夢は学校の先生だった。

学校の先生としての職務を小学校と高校で計3年全うした。
最後の高校の1年間の教師生活で教え子だったのが、金澤さん。

せっかく夢を手に入れたのに、自分の家柄のために放り出さなければならない現実。
だからこそ、龍成社以外のことは好きにやっているんだろうな。

『このままだと、神戸さんも本邸に行かなきゃならないかな?』
『う~ん、避けて通れないだろうね。だから手始めにここを訪問したんでしょ?剛』
『そうだよ』

金澤さんがそれを聞いて"やったぁ"と喜んだ。

『神戸さんを道連れにできるなんて、これで私も本邸に行く時の憂鬱さが少しは消えるかも~』
『金澤もいまだに嫌なの?あの家。僕はそこに現在も暮らす人間だけど?』

そんなに成瀬川家ってハードルが高いのかなぁ。
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