孤独女と王子様

『でも、家賃は？』
「そんなもの、僕だって払っていない。ここは成瀬川グループの社宅扱いだけど、最初に買い上げてから、誰も賃貸契約をしていないんだ」
『健吾さんたちは？』
「払ってないよ。むしろ誰かに住んでもらった方がありがたいくらい」

由依ちゃんはそれでも戸惑っている様子だ。

『でも、ひとりで住むには広すぎるよ』
「僕もあとから住むよ」
『同棲ってこと？』
「う～ん。本当は同棲じゃなくて・・・いや、やっぱり順番はきちんとしなきゃね。でも由依ちゃんはここに住んで。これ、僕の命令」
『命令・・・って』

僕は由依ちゃんがいるアイランドキッチンの、由依ちゃんの隣に立った。

「柳井くん、いるでしょ？」
『どうして突然その名前？』
「彼は、本当に君と向き合えることを目指して、大学4年間頑張ったらしいよ」
『それに近い話は、この間うちでしていたよね』