孤独女と王子様
『剛さんは、私のことを信用できないの?』
「え?」

由依ちゃんは僕の肩に頭を乗せてきた。

『・・・って言うのは嘘。剛さんの気持ち、痛いほど良く分かるもん。アパートのセキュリティー以前に、柳井くんの存在は、確かに心配だよね。もし逆の立場なら、私も嫌だもん』

由依ちゃんはさらに両手を僕の腰に巻き付けた。

『柳井くんと久しぶりに会ったイベントや、その後の打ち上げ、さらにうちに来た時、あの頃の、高校生の頃のドキドキを、全く彼から感じることはなかったよ。それだけは信じて欲しいな』

その由依ちゃんの訴えに、僕は答えた。

「うん。分かってるよ。だから、ここに住んでと命令しているのは、ただの僕の独占欲だから」

僕の言葉に、見上げた由依ちゃん。
あまりに顔が近かったので、軽くキスをした。
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