孤独女と王子様
『そんな親に突き放されてちゃ、卑屈にもなるでしょ。でもこの子で大丈夫?ぬくぬく温室育ちなお坊ちゃんだけど』

"さ、お料理並べなくちゃ"と、忙しくランチの準備を始めた母さん。

その料理の数々に、由依ちゃんは目を輝かせた。

『うわぁ、綺麗なお料理ですね』

並ぶのは母さんの得意なイタリア家庭料理。

由依ちゃんは和食を得意にしているので物珍しいのかも知れない。

『本当に美味しいです』

由依ちゃんは喜んで母さんの料理を食べている。

僕は食べ慣れているけど、由依ちゃんは食が細いのに今は良く食べていることに驚いた。

『笑った顔も、舟にそっくりね』

母さんは、由依ちゃんの顔をじっと見ている。

『アイツに由依ちゃんのような可愛い娘がいたことに、かなり嫉妬。私も娘が欲しかったなぁ。でも信夫さんとの約束だったし』
『信夫さん?』
「僕の父さんのこと」
< 293 / 439 >

この作品をシェア

pagetop