孤独女と王子様
『僕は何故かこれを持たされているんだよね。だからこの家にも出入り自由。あ、ちなみにうちの門の場合はリモコンもなくて、車のナンバーをカメラが読み取って自動的に開くんだ』

もう、凡人な私には分からない世界。
生活するのに門なんてないし・・・

今、門の内側に入ったけど、さらに車は走らせている剛さん。
玄関のドアはどこにあるのよ?
ここ、東京だよ?
土地広すぎでしょ。

ようやく5台は停められる屋根付きの駐車場から外に出ることなく入れるエントランスに着いた。

見上げると、高い屋根にステンドグラス。
目の前にはらせん階段。

床はフカフカの絨毯。
土足のまま進む建物。

「靴は脱がないの?」
『ここは土足で過ごすスタイルの家だから』

私が履いているのはヒール3センチの黒いパンプス。
今日は出版社との打ち合わせがあって、薄いグレーのスーツを着ているから。
< 302 / 439 >

この作品をシェア

pagetop