孤独女と王子様
『まず、私のことは気軽に"お父さん"で構わないから。健吾たちの時に、玲奈ちゃんが私の呼び方に困っていたのを、今思い出したよ』
「はい、お父様」
『まだ、硬いね』

"アハハハ"と笑ったお父様。

「すみません」
『そんなに私って怖いかな。カリスマ書店員である"神戸由依"さんが、そんなに緊張なさらなくてもいいでしょう』
『父さんも知っていたの?由依ちゃんの名前』
『うん。知っていた。君はかなりの有名人だからね。今日、こんな形で会えたのは嬉しいよ』
「恐れ入ります」

私は目の力に負けて、やや俯いてお父様の言葉に答えた。

『そんな周りの信用を得られる仕事の仕方が出来る人間が剛の妻になっていただけるなんて、こっちからお願いしたいくらいだから、私から言うことは何もないよ』
『父さん・・・』
< 329 / 439 >

この作品をシェア

pagetop