孤独女と王子様
『啓慈は綺麗なお姉さんが元々好きだから、由依がお姉ちゃんになったことは願ったりかなったりなんだよな』

お父さんの言ったことが理解し切れないのか、啓慈くんはポカンとしていた。

『啓慈、お前は鴫ノ宮(シギノミヤ)家のミオちゃんのことが好きなんだよな』

鴫ノ宮家か。

日本の旧三大財閥。
成瀬川、鍬形、鴫ノ宮。

しれっとそのうちのひとつの名前が出てきてしまうあたり、やっぱりただものではない。

『由依ちゃん、慣れなくちゃ』

剛さんは当然前を見て運転しているのに、私の戸惑いな雰囲気が分かってしまったみたい。

『由依ちゃんに出会う前にね、僕はそのミオとの結婚話があったんだよ』
『おう、そう言えばそうだったな。今更だけど、あれは何で別れたんだよ』

興味深そうにお父さんが剛さんに聞く。
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