孤独女と王子様
「ちょっと、ここ玄関だから!」
『なら、場所を変えればいいよね』

と、私をひょいと持ち上げて、リビングのソファーに座らされた。

『ねぇ、知ってる?』
「ん?」

私に主語のない疑問文で剛さんに話しかけられたのは、既にソファーで一度繋がり終えた後。

『家庭円満の秘訣は、夫婦が愛し合い続けることなんだよ』
「そうだね」
『だから、いつまでも、僕は由依ちゃんだけを愛し抜く』

剛さんはまた、キザなセリフを。

「いつまでも、その言葉を忘れないで。照れずに言ってね」
『もちろんだよ』

こうしていつまでも私達は飽きずに唇を合わせ続けた夕方だった。
< 380 / 439 >

この作品をシェア

pagetop