孤独女と王子様
『着物は着慣れているけど、さすがに帯はちょっと派手よね』

お母さんはそう言って帯を撫でた。
どうやら、鍬形家と古くから付き合いのあるお店で見立ててもらったらしいその帯は、ゴールド基調のキラキラしたものだった。

対する男性2名は、普段のスーツとそうは変わらない、黒目のもの。
けど、ネクタイがいつもと違うかな。

お父さんはサーモンピンクのストライプ。
剛さんは私と同じエメラルドグリーンの無地。
ちなみに生地は私のドレスと一緒。

さらにそれぞれにポケットチーフがある。

元々2人とも仕立てのいいスーツを着ているから、着慣れているよね。

『由依ちゃん、可愛い』

剛さんが隣に座る私にそっと耳打ちしてくれた。

「ありがとう」
『でも、体調が悪いと思ったら、絶対我慢しちゃダメだからね』
「分かった」

私は現在、妊娠13週と少し。
つまり4ヶ月目に入ったところ。
まだまだ体調は不安定・・・だけど、多分悪阻は軽い方だ。

でも、最初に救急車のお世話になってしまったので、それ以来剛さんはすっかり神経質になっている。
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