孤独女と王子様

『お前の言っていることは正論だよ。返す言葉もない。新入社員のお前には辛い思いをさせてるのも分かってる。でも直接俺が他の部を差し置いて関わるわけにもいかないだろ。ただ、遠藤部長が何も考えずに判を押している書類だと分かったら、遠慮なく俺に相談しろ』
『…分かりました』

言葉とは裏腹に、桐生さんに納得している様子はない。

『まぁ、確かに桐生が納得しないのも分かるよ。局長の言ってることは根本的な解決にはならないからねぇ』

ビールを煽り続ける長野部長が桐生さんの心情を察しているようだ。

しかし、局長は言う。

『世の中には理不尽なことは沢山ある。次の定期異動でどうにかならないか社長に交渉はするけど、申し訳ないが暫くは耐えてくれ』
『はい』

桐生さんは渋々返事をした。

『ああいう人、友達とかいるんですかねぇ』

花村さんが言う。